PigmentsのHarmonicエンジンは、アディティブシンセシスです。
アディティブシンセシスは、倍音加算方式とも言い、倍音のないサイン波を数多く用いて、あるものは音程成分となる基音に、別のものは倍音として音を作ります。
これらの各倍音をPartialと呼びます。
このリミットはCPU負荷の軽減のためや、音作りでのわかりやすさのためにも効果的です。
ブルーの動く波形は各Partialの振幅をリアルタイムに表示します。
色々なパラメーターがあります。
Ratioノブで各Partialの周波数比を調整します。
Parityノブで、奇数次倍音と偶数次倍音のバランスを調整します。奇数次や偶数次というのは、基音の周波数の基数倍や偶数倍の周波数という意味です。
このバランスは連続可変で調整できます:奇数次倍音のみ、偶数次倍音のみ、あるいはその中間のどこでも好きなバランスに設定できます。
アナログシンセに置き換えるとすれば、50/50のバランスで基本的にはノコギリ波になります。三角波や矩形波を作るときは、奇数次倍音のみにします。
三角波の音がメロウなのは、倍音が高くなるほどその振幅が急激に小さくなるためです。
実際には偶数次倍音のみのというシンプルな波形はアナログシンセにはありませんが、Harmonicエンジンなら簡単に作ることができ、その音はシンセ・ハープシコードのような心地よいサウンドになります。
倍音が高くなっていくと、振幅が徐々に小さくなっていきます。
そのスロープの傾きを調整するのが、Tiltノブです。
Tilt Offsetで、スロープが始まるポイントを設定します。
これはSpectrumセクションです。スペクトラムは複雑なマルチポイントEQや、コムフィルターのようなものです。
このセクションで、アディティブ方式で作成した波形の色々な周波数帯域を加工することができます。
ここには、12種類のスペクトラムシェイプと、2つのスペクトラムスロットがあります。
Sectionで波形を加工する帯域を設定します。
Morphで2つのスロットのスペクトラム間をスムーズにブレンドします。
Depthは、スペクトラムで波形を加工する深さです。
Imagingセクションでは、Partialのステレオイメージを設定します。
奇数次と偶数次倍音の定位を左右に振り分けたり (Splitモード)、個々のPartialをランダムにパンニングしたり (Randomモード)、Partialをクラスター単位で定位させる (Periodicモード) こともできます。
この機能を使用すると、Partialビューワーの波形ディスプレイにちょっとした工夫がされていることが明らかになります:個々のPartialのパンニングも表示されるのです。
波形ディスプレイのセンターの水平線から白い線が上へ伸びるときは、そのPartialが左側にパンニングされ、下方向に白い線が伸びるときは、右側にパンニングされます。
ここは覚えてくべきポイントですが、Pigmentsの他のパラメーターと同様、Imagingセクションのパラメーターもモジュレーションのターゲットにできますので、各Partialがステレオの左右間を行き交うような面白い効果を作り出すことができます。
は、3タイプあるPartialモジュレーションモードの1つです。
Windowモードでは、アディティブで作成した波形全体のうち、一部の区間を区切ってFM変調をかけることができます。
区間の大きさやポジション、その区間のゲイン (音量) を設定できます。
FM変調のソースは、内蔵のModulatorオシレーターです (下のトピックもご覧ください)。
Clusterモードでは、Partialを1つのサイズ調整可能な"窓"に集めることで、例えば一部の倍音の周波数比を下げるといったことができます。
Shepardモードでは、各Partialの周波数を1つの上のPartialの周波数にシフトさせることができます。
繰り返しになりますが、"窓"のサイズは調整可能ですので、モジュレーションをかけることで基音の周波数は変化していなくても、ピッチが無限に上がっていったり、下がっていっているように聴こえる"Shepard's Tone" (無限音階) を作ることができます。
HarmonicエンジンでのModulatorセクションは、Partialモジュレーション (Windowモード) のFMソースや、Ratioセクションのゲインソースとして機能します。
Modulatorセクションのパラメーター構成は、他のエンジンのModulatorセクションと同様です。